2010年7月28日水曜日
なぜ投資のプロはサルに負けるのか?
ファイナンスに興味はあるけど、全く知識がない人にとってとてもためになる本だと思います。もちろん、数学理論バリバリでファイナンスを勉強してきた人にとっても、よい本です。難しい用語もあまり使わずに、中学生や高校生でも読めると思います。これでお金が稼げるようになるとは限りませんが、少なくとも変な投資の話などには騙されないようになるでしょう。
よく日本人は投資などのようなバクチはせずに、まじめにコツコツと働くことが一番だといわれています。確かに、この本にも最後の方で「お金があんまりない人は、下手な投資はしない方がいい」と書かれていて、私自身もそうだと感じています。
しかし、実態をよくみてみるとそうではありません。日本人はかけごとが大好きだと思います。たとえば先日、銀座に遊びに行ったときに、宝くじ売り場に行列ができていました。もちろん、「夢を買うんだ」という人の意見を否定するつもりは毛頭ないですが、なぜあんなに集中して並ぶのかが不思議でなりません。どこで宝くじを買おうと、当たる確率は変わらない(意図的な操作などがなければ)からです。これは細野さんの本にも書いてあったり、ちゃんと確率の勉強をしてきた人にとっては当たり前のことです。あんなに当たりくじが当たるのは、買う人の数(母数)が多いからなんです。宝くじを100万枚売って1人当たるのと、1000万枚売って10人当たるのとでは、「当たる確率は同じ100万分の1」のはずです。
また、宝くじの全体的なリターンを考えたら、確実にマイナスとなります。なんで1億円とか2億円を当選くじとして支払うことができるのかというと、宝くじを買う人たちがいるからです。宝くじを購入した人たちが1億円や2億円を払っているようなもので、さらに余分なお金は国(地方)に持っていかれてしまうんです。パチンコや競馬なども同じです。もちろん、儲けようと思わずにエンターテイメント的に楽しむだけならいいと思います。全く否定するのも、世間の常識(?)的なお話についていけなくなるからです。私の父は「こんなことは、ちょっとだけお金をかけて楽しむ程度がよい」と、私が小さいころから言っていました。
冒頭にも申し上げたように、この本を読んだからといって簡単に儲けることはできないでしょう。ただし、もう「ここの宝くじ売り場が当たりやすい」というような話を信じるようなことはしなくなるでしょう。お金の話になるとどうしも「儲ける」とか「稼ぐ」とか増やす方向に目が向きがちですが、「お金を賢く減らさない」というのもとても大事なことなのです。
ちなみに、著者の方は数理系の研究をされていて、その後に外資系投資銀行でクオンツとして働かれているみたいです。この本が出た時期がちょうど好景気でリーマンショック前だったので、結構景気がいい話も書かれています。しかし、以前の日記に紹介したようにゴールドマン・サックスなどはあのリターマンがいたクオンツ事業をなくしたり、ドイツ証券もクオンツ系の事業をなくしたという記事を先日見た気がします。他の外資系金融機関でも、リーマンショック後つぶして、リストラしているところもありました。
ただし、この不景気の中でも、一部のヘッジファンドなどは数理系の人たちばかりを集めて、すごい成績を出しているみたいです。今後クオンツ系の仕事の需要が増えるかどうかはわかりませんが、自分は今までのファイナンスの知識を身につけるだけではなく、視野を広げて新しいモデルを開発することに専念するのみです。
この方はときどき過激な発言をするときもあるような気がしますが、本音で書かれていることもあるので、本を読んでいても、日記を読んでいてもすっきりします。とても読みやすいです。
「お金を稼ぐ」ということを重視したいならば、クオンツのような理論バリバリよりも、営業マン的な人の方が稼いでいるケースが多いようですね。最近、色々な社会人の方とお話する機会が多いのですが、お金持ちの人ほど占いとか風水とかスピリテュアル的な話を信じる人が多いようです。論理的な考え方ができて、論理的な話ができるからといって、いっぱい稼げるとは限りません。いかにサービスをするか(人を満足させるか)、もしくは怪しい投資のお話ようにいかに人をだますか(?)が重要らしいです。もちろん、法的な範囲内ということですが。私はそういった話にあまり関心がないので、お金を稼ぎたいだけだったら違うサイトにいくことをおススメします(笑)。
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