2010年8月6日金曜日

大学・大学院の数学(確率解析)

今回は確率解析に関する本です。私の専攻によってファイナンス系の専門書によりがちですが、ご了承願います。ここで話すレベルは大学4年~大学院1年生のレベルです。

確率解析はブラウン運動や伊藤積分、伊藤の公式、確率微分方程式について勉強します。おおざっぱにいうと、ブラウン運動は粒子などがあっちこっちに動く現象のことで、それを定義して積分しようというのが確率(伊藤)積分で、それが入った方程式を確率微分方程式いいます。伊藤の公式は、ブラウン運動が入ったときの合成関数の微分の公式(連鎖律)みたいなものです。たとえば、(色んな仮定は所与として)df(W(t))=f'(Wt)W'(t)dtなのですが、Wがブラウン運動だとこれにf"(W(t))dt/2が加わります。

この確率解析に関する本(確率微分方程式という名がついている本など)もたくさんありますが、かなり抽象的に書かれてある本がほとんどです。そういった本で挫折しそうな人は、以下の藤田先生の本がおススメです(誤値もあるので注意)。



数学科の人にとっては、確率微分方程式の解がちゃんと存在するのかということと、一意性があるのかということをチェックすることは当たり前なのですが、そんなことを全員の人が知る必要はあまりないでしょう。それを理解するのに何時間もかかるのに、

dXt=dWt+(y-Xt)dt/(T-t)

の解がブラウン橋(ある期間ではじめと終わりの位置がわかっているブラウン運動)になることを示すことができなかったり、ファイナンスで有名なオールンシュテイン・ウーレンベック過程の確率微分方程式の解を求めることができないのは・・・という感じです。(もちろん、確率微分方程式の解の存在と一意性を示すことができる人は、ちゃんとやり方さえ教わればできるので、まあ問題はないといえば問題はないとは思いますが。)。

確率微分方程式を勉強してきたけど、定義や定理にうんざりしていて、高校の時のように計算をバリバリやりたい人にとってはおススメです。

さらに洋書が読める人には以下の本をすすめます。最近みつけた本で、いい本ではないかと思います。



これもちゃんと問題の解答がついていて、丁寧に記述してあります。またぎっしり書いてなくて、読みやすく、定義や定理ばかりにうんざりしている人にはおススメです。

あと以下の本もわかりやすいです。



他は有名な本で、私も舟木先生や小川先生の本を使っていました。舟木先生の本もわかりやすいです。



小川先生の本には、確率微分方程式の数値計算なども紹介されてあります。



下の本はほとんど使っていませんでしたが、定評があるようです。ただ、数学科以外の人が使うのはちょっと大変かもしれません。



これも定番みたいです。



ファイナンスに関係する専門書は以前にも紹介したシュリーブが有名です。1番目の本はファイナンスと確率解析の入門の入門という感じです。2番目の本が本格的でしょう。練習問題の解答はないのですが、数式だけではなく、きちんと数式の意味を文章で説明してあるので、イメージしやすいです。測度論的確率論の勉強などをされている人は、1、2章はとばしてもよいでしょう。3番目の本についてなのですが、初心者にはあまりおススメしません。上に紹介した本が読めるようになったら、だいぶ理解できるようになるかと思います。







他には、(しっかりと読んだことはないのですが)池田先生と渡辺先生の確率微分方程式の本(ikeda,wadanabe:stochastic differential equations and diffusion processes)が有名で、多様体上における確率微分方程式についても載っています。マリアバン解析という無限次元の解析については以下の本がいいようです(というかこれらくらいしかありません)。






他にもあるのですが、紹介する本が多くなってきたので、以上です。

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